【完結】わたしたち、離婚を前提の期間限定夫婦になります。
⑬言えない秘密
「ただいま帰りました」
「おかえり、紅音」
あっと言う間に時は過ぎ、離婚まで残り5ヶ月になった。
時間の流れは残酷だ。一日一日が本当に早くて、ため息が出そうになる。
「今日は、ちょっと肌寒くなってきたのでお鍋にしますね」
「お、いいな」
季節は秋になり、秋の匂いがする。木々の葉は落ち、イチョウが咲く頃。もう少しもすれば、紅葉が見られるだろうな……。
そっか……。もうそんな季節になってきたんだ。
「……紅音?どうした?」
「え?……あ、いえ、何でもないです」
残り5ヶ月しかないんだな……。爽太さんと夫婦でいられるのは。
最近では、暇さえあればそんなことばかりを考えるようになっていた。
「何か手伝うよ」
「あ、じゃあ……土鍋、出してもらってもいいですか?」
「お安い御用だ」
優しい笑顔を向けて土鍋を棚から出してくれる爽太さん。その背中に、思わず見惚れてしまう。
「ほら、取れた」
「すみません。ありがとうございます」
お礼をして土鍋の蓋をガスコンロにセットした。
「今日はなんの鍋だ?」
「今日は豆乳鍋にしようかと」