【完結】わたしたち、離婚を前提の期間限定夫婦になります。


 そっと自分のお腹に手を当てながら、唇をそっと噛みしめる。
 この前病院に行って発覚した。ーーーわたしが、爽太さんの子を妊娠していることを。

 だけど分かっている。爽太さんはわたしとの間に子供は作らないとあれだけ言っていたんだ。
 そんなことを受け入れてくれる訳がない。受け入れてくれる訳……ない。
 わたしは子供が欲しかった。爽太さんの子供が欲しかった。だけどそれを望んでいたのは、わたしだけ。爽太さんは望んでなんてない。
 
 この前の診察の時、ちょうど今、妊娠10週目だと言われた。
 信じられなかった、わたしが妊娠しているなんて……。だけど同時に、涙が出た。
 けどその涙は、嬉しいものなのかどうかすら分からなかった。嬉しかったとしても、その気持ちを爽太さんに伝えることなんて出来ない。

「……分かってるよ」

 言わなくちゃいけないことは、よく分かっている。分かってるのに……。
 伝えることがこんなにも怖いなんて、思ってもなかった……。本当なら喜ぶべきはずの新しい命なのに、素直に喜べないのはなぜだろう……。
 きっとそれはーーー
< 122 / 208 >

この作品をシェア

pagetop