【完結】わたしたち、離婚を前提の期間限定夫婦になります。
「紅音?」
そしてふと爽太さんの声が聞こえてくる。
「……え?」
「どうした?大丈夫か?」
そう問いかけられたわたしは「……はい。大丈夫です」と答えた。
だけど本当は、大丈夫なんかじゃない。大丈夫なんかじゃ……ない。
この不安を抱えたまま生活をしていかなければならないなんて、辛いとしか言えない。
「そろそろ鍋、大丈夫そうか?」
「ど、どうでしょうね。ちょっと見てましょうか」
わたしは急いでミトンをはめて、土鍋のフタをそっと開けた。
フタを開けると、鍋のつゆの匂いや野菜の匂いが鍋いっぱいに広がった。
「ちょうど良さそうじゃないか?」
「……そう、ですね」
美味しそうな香りが湯気と共に広がってくる。
「あの、わたし、お風呂見てきますね……!」
「え、紅音?」
キッチンから出たくて急いでバスルームへと向かった。
「……っ……」
どうしよう……。こんな所で泣いたりしたら、爽太さんはきっと心配する。
泣いてる場合じゃないなのに……。
「……よし」
お風呂のお湯が溜まっているのを確認し、わたしはキッチンへと戻った。