【完結】わたしたち、離婚を前提の期間限定夫婦になります。
「爽太さん、お風呂、溜まってました」
「紅音、何かあったのか?」
そんなわたしの目をまっすぐ見て、爽太さんは言った。
「……え?」
「何か様子が変だから」
そう言われてビクッと体が震えた。
「……そうですか?いつも通りですよ?」
「本当か?」
「本当……です。疲れているだけですから、大丈夫です」
その言葉で納得してくれるかは分からなかった。だけど、そう言い聞かせるしかなかった。
爽太さんに余計な心配をかけたくない。爽太さんは今とても忙しいから、そんなことで心配をかける訳にはいかないの……。
「そうか。ならいい」
妊娠していることをいつまでも隠し通せるとは思ってないけど……。それでもまだ、今は話せない。
「すみません、心配掛けて」
「いや、大丈夫だ」
そうやって優しく笑ってくれる爽太さんを見て、わたしは更に複雑な気持ちになる。
爽太さんの気持ちを知っているからこそ、悩むのは当たり前だけれど……。
「じゃあ、ご飯にしましょうか」
「そうだな。 よし、俺が向こうまで運ぶよ」
「ありがとうございます」