【完結】わたしたち、離婚を前提の期間限定夫婦になります。
熱々の土鍋を運んでくれる爽太さんのその後ろ姿を見て、わたしは少しだけ、切なさを感じた。
「紅音?」
「あ、すいません。今お箸持っていきますね」
「ありがとう」
爽太さんは優しく微笑むと、冷蔵庫からお茶を取り出してお揃いのマグカップにお茶を注いでくれた。
「さ、食べよう」
「はい。いただきます」
「いただきます」
二人で手を合わせて、熱々のお鍋に入った具材をお玉で救い食べ始めた。
「あっつ……。でも美味い」
「ね、美味しいですね」
こうして二人で食べる夕食も、食べられなくなる日が来るんだよね……。
そう考えただけで、胸が苦しくなる。
「熱いからフーフーして食べてくださいね」
「分かってるって」
熱いと言いながら美味しそうにお鍋を頬張る爽太さんを見て、わたしは思わず笑ってしまった。
「え、なんだよ」
「いえ、美味しそうに食べるなって思って」
「だって美味いだろ?」
そう言われてわたしは「フフ……。そうですね」と答えた。
「紅音は食べないのか?」
「食べますよ。 あ、明日は雑炊にでもしましょうか」
「それはいい考えだな」