【完結】わたしたち、離婚を前提の期間限定夫婦になります。


 突然のシンガポールへのお誘いに、わたしはなんて答えればいいのか分からなかった。

「たまには、息抜きも必要だろ?紅音さえ良ければ、連れて行ってもいいと親父も言ってたから」

「……わたしも、一緒に?」

 一緒に行けることなら、出来れば一緒にいたいと思う気持ちもある。
 だけど同時に、妊娠しているこの体で海外に行くのはとてもリスクがありすぎる気がした。……もしそこで何か起きたら、わたしはきっと自分を責めるかもしれない。

「ああ。一緒に来るか?」

「……いえ、わたしは大丈夫です。お仕事なら仕方ないですし。……それにわたし、今はちょっと日本から離れる訳にはいかないので」

 こんなのは言い訳でしかない。だけど今、妊娠していることを爽太さんに知られる訳にはいかない……。
 ここは安全を優先に考えた方がいいと思う。

「……そうか。分かった」

「すみません。お気持ちだけ、受け取っておきます」

「ああ。寂しい思いをさせてしまうこと、許してくれ」

 そう言われてわたしは「いえ、大丈夫です」と答えた。

「出来るだけ君に、連絡するよ」

「……はい」
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