【完結】わたしたち、離婚を前提の期間限定夫婦になります。
⑮母親になるための決意
それから数日後、わたしは錦総合医療センターへと来ていた。
今日が検診の日のためだ。産婦人科で受付を済ませたわたしは、名前を呼ばれるまで待合室で待っていた。
待合室では、旦那さんと一緒に来ている人もいれば、お腹が大きく間もなく産まれそうな人もいる。……だけどみんな幸せそうな顔をしているように見えて、わたしにはなんだか辛く感じた。
「……ふぅ」
そしてその時だったーーー
「あれ……?紅音、さん?」
「……え?」
ふと見上げると、そこにいたのは、美乃梨さんだった。
「え、美乃梨さん……?」
「やだ、偶然だね!どうしたの?」
なんて聞かれても、【妊娠した】なんて言える訳はなくて……。
「あ……ちょっと、検診に……」
「え?もしかして、紅音さん……」
美乃梨さんの言葉にわたしは、何も言うことが出来ずにいた。
「……そっか」
美乃梨さんはわたしの言いたいことを察してくれたようで、あえて何も言おうとはしなかった。
「……あの、美乃梨さん」
「ん?」
「爽太さんには、言わないでください。……後、加古川先生にも」