【完結】わたしたち、離婚を前提の期間限定夫婦になります。


 嬉しそうにそう話す美乃梨さんを見て、わたしは少しだけ罪悪感を感じた。
 家族になるって素晴らしいことなのに……。それを受け入れることに抵抗がある自分を恨みそうになる。

「……ねぇ、紅音さん」

「はい」

 するとその時、【小田原紅音さーん、診察室へどうぞ】とアナウンスが聞こえたきた。

「すみません。行ってきます」

「うん」

 わたしは美乃梨さんの表情が少し気になったけれど、そのまま診察室へ入った。
 診察を終えて待合室に戻ると、美乃梨さんはまだそこにいた。

「紅音さん、診察どうだった?」

「大丈夫そうでした」

 わたしは美乃梨さんの隣に座ると、美乃梨さんは「わたしも今からドキドキだよ」と答えた。

「そうですよね。緊張、しますよね」

 検診なんてドキドキしっぱなしだ。何を言われるのかと不安になるし……。

「そういえば、さっき何を言おうとしたんですか?」

 さっきの美乃梨さんの表情が気になって聞いてみた。
 
「ううん。同じ時期に妊娠したってことは、わたしたちの子供は同級生なんだって思っただけ」

「あ、確かに……。そうですね」
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