【完結】わたしたち、離婚を前提の期間限定夫婦になります。


 そう言われれば、そうだ。わたしたちの子供は、同じ時に産まれるから同級生になる。
 産めば、の話だけれど……。

「紅音さん?」

「…………。え?」

「大丈夫?」

 大丈夫と聞かれたけど、大丈夫だと答える余裕なんてまるでない。

「大丈夫です。 じゃあわたし、行きますね」

「うん。また遊びに来てね」

「はい」

 わたしは立ち上がると、そのまま美乃梨さんに【さよなら】と言って病院を出る。
 その後はひたすら、何も考えないようにした。ただ歩きながら、自宅までの道のりを歩いた。 

 歩いている途中で何度も目にするのは、子供たちがはしゃぐ姿や走り回る姿だった。
 元気にはしゃぐその姿を見て、わたしたちの子供もこんな風に育っていくのかなとか、色々なことを考えた。 

 わたしは今日の検診で、先生から【お母さん】と呼ばれた。だけどお母さんなんて実感まるでなくて、まだ信じられないのだ。
 本当に妊娠しているのだと知ってもなお、まだ信じられない。
 わたしはちゃんとお母さんになれるのか、ちゃんと家族になるために頑張れるのか。その答えすら見つからない。
< 143 / 208 >

この作品をシェア

pagetop