【完結】わたしたち、離婚を前提の期間限定夫婦になります。
「じゃあ美味しい料理、作って待ってますね」
「楽しみにしてるよ。紅音にお土産も買っていくから」
「いいんですか?ありがとうございます」
爽太さんがお土産を買ってきてくれると言ってくれたから、それはすごく楽しみだった。
会えるのも嬉しいし、早く顔が見たい。こんなにも寂しいと思ったこと、今までなかったかもしれない……。
「すまない。もう行かなければならない」
「はい。お気を付けて」
「ありがとう。愛してるよ、紅音」
「……わたしもですよ」
愛してると言われると嬉しいのに、複雑な気持ちになる。こんなにも幸せなのに、なぜか泣きたくなる。
それはきっと、わたしたちが普通の夫婦ではないからだ。一生一緒にいられるほどの、保証じゃないからだ。
二人の愛の証を授かった今、家族になるために喜ぶべきことなのに。……わたしたちには、それは出来ない。普通の夫婦みたいに、幸せにはなれない。
「……夕飯、作らないとだよね」
その前に買い物に行かなければ……。
ローストチキンと、ビーフシチューを作らないと。爽太さんのリクエストだから。楽しみにしてくれているし。