【完結】わたしたち、離婚を前提の期間限定夫婦になります。


「ほしいなら、買えばいい」

「……え?」

 わたしは爽太さんの顔を見上げた。

「オルゴール、好きなんだろ?」

 爽太さんからそう問いかけられてわたしは、一瞬戸惑った。
 好きなのかどうか、答えられなかった。

「貸してみろ」

「え? あ、ちょ、爽太さん……!」

 わたしの手からオルゴールを抜き取った爽太さんは、そのままそれをレジへと持っていってしまった。

「い、行っちゃった……」

 そしてあっという間に会計を済ませた爽太さんは、その袋をわたしに笑顔で「ほら」と渡した。

「あ、ありがとう……ございます」

 袋を受け取ったわたしは、それを少しだけギュッとしてカバンの中に入れた。

「……爽太さん。オルゴール、大切にします」

「ああ。 そろそろ行こうか」

「……はい」
 
 わたしたちはまた、手を繋いでバイキング会場へと向かった。
 何十年ぶりのバイキングなのか分からないけど、会場に入っただけでとてもワクワクした。

「すごい……」

「すごい料理の数だな?」

「は、はいっ」

 まるで子供みたいに、わたしはワクワクした。
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