【完結】わたしたち、離婚を前提の期間限定夫婦になります。
「……まさか」
それでシンガポールに一緒に行くのを断ったってことか……?
妊娠していると分かっていたから、海外に行くのは危険だと判断して、断ったってことだよな?
「クッソッ……」
俺はなんで紅音の異変に気付いてやれなかったんだ……。あれだけ一緒にいたのに、妊娠していたことにすら気付いていなかった。
俺は夫として、失格だな……。
「紅音が妊娠……」
紅音は、子供を産みたいと思ってくれているのか……?それとも……。
そしてその時だった。
「爽太さん……?何してるん……っ!?」
起きてきた紅音にそう声を掛けられたが、すぐに紅音は気付いたようだ。
「紅音……。お前、妊娠してるのか?」
「なんで……。なんで爽太さんが、それ……」
紅音の様子は、明らかに動揺していた。
様子が変わったのは、きっと妊娠していることに俺に気付かれたから……だな。
「紅音、なぜもっと早くに言わなかったんだ。……こんな大事なこと、なぜ言わなかったんだ?」
「それ、は……」
俺が紅音に近寄りそう問いかけると、紅音はそれ以上、何も答えようとはしなかった。