【完結】わたしたち、離婚を前提の期間限定夫婦になります。
「紅音、お前……。妊娠してること、ずっと俺に言わないつもりだったのか?」
俺がそう問いかけると、紅音は「それは、違います……!」とだけ返事をした。
だけどすぐにまた、口を閉じた。
「……紅音、お前一人でずっと、抱え込んでいたのか?」
「……言える訳、ないじゃないですか」
紅音は静かに口を開いた。
「爽太さんとの間に子供は作らない。……そう決めて結婚したんですよ? それなのに妊娠してしまって……。そんなこと、言えると思いますか?」
紅音は泣きそうな顔で、必死で涙をこらえていた。
「……わたしは爽太さんとの子供が出来て、正直に言うと焦りました。もちろん、嬉しかった気持ちはありました。 だけど、爽太さんにはまだ話せないって思って……。だから、言ってませんでした。もちろん、いつかは言おうと思っていました。……この子のためにも」
紅音の気持ちを聞いた今、俺は思ったことがあった。
紅音はもう、母親としての自覚を確実に持っている。……今までとは違う何かを感じたのは、確かだった。
それは多分【母親になるための覚悟】なのかもしれない……。