【完結】わたしたち、離婚を前提の期間限定夫婦になります。
「はい。分かりました」
わたしはそう答えると、上着やカバンを手に待合室へと戻った。
診察を済ませ会計をしてから帰宅しようとした時、ちょうど中庭に目をやると、加古川先生がいた。
「加古川先生……!」
と、わたしは加古川先生の名前を呼んだのだった。
「ん? おう、紅音さんじゃないか」
「お久しぶりです。加古川先生」
「お久しぶりです。お元気でしたか?」
と聞かれたわたしは「はい。おかげさまで」と答えると、ベンチに腰掛けた。
「良かった。 今日、検診だったんですか?」
「はい。そうなんです」
「そうですか。どうでしたか?」
隣に座る加古川先生は、そう聞きながら走り回る子供たちに視線を送っていた。
「特に問題もなさそうでした。 ただ、もう少し体重を増やした方がいいとは言われました」
「そうですか。まぁ赤ちゃんが成長するために必要なことですからね。 くれぐれも無理だけはしないように、してください」
加古川先生の言い方は本当に優しくて、本当に医者なんだって改めて感じた。
「ありがとうございます」
「小田原にも、よろしく伝えておいてください」