【完結】わたしたち、離婚を前提の期間限定夫婦になります。
「紅音。この離婚届、やっぱり出すのやめないか?」
その一週間後、爽太さんは自分の名前の書いた離婚届をわたしの前に差し出し、そう言ってきた。
わたしはそれを少し見つめ「……え?」と爽太さんの顔を見た。
「……離婚するの、やめよう。俺たち」
そして改めて、その離婚届と爽太さんの顔を交互に見た。
「……え?やめるん、ですか?」
「ああ。……だって離婚する必要、俺たちにはないだろ?」
爽太さんはわたしに向かってそう告げると、わたしの手を握りしめてきた。
「……はい。そうですね」
この子が産まれるまで、まだ時間がかかる。出産までの道のりは、これから長くなる。
一人で出産するために、わたしはこれから頑張らないといけない。この子を元気に産むためにも、一生懸命頑張らないと……。
だけど爽太さんがいてくれるなら、安心する。
「紅音、寂しくなるけど、必ず迎えに行くから。……だから、待っててくれ」
「……はい。待ってます」
爽太さんが帰ってくるまで、わたしはこの子の母親として、この子を守り育てていく必要がある。
爽太さんとの、大切な宝物だから。