【完結】わたしたち、離婚を前提の期間限定夫婦になります。

 
 そして当日、爽太さんを見送るために、わたしは空港へと来ていた。

「紅音さん、元気でね」

「沙和さんも、元気で過ごしてください」

 沙和さんとも少し会話を交わすと、沙和さんはわたしに「紅音さん、元気な赤ちゃん、産んでね」と言われた。

「はい。ありがとうございます」

「赤ちゃん、いつか抱かせてね」

「はい。ぜひ」

 沙和さんはこれからずっと、ウィーンでバイオリンの練習に励むそうで、向こうでもコンクールにも出場する予定だそうだ。
 頑張ってほしいな、沙和さんにも。

「お兄ちゃん、わたしたち先に行くね」

「おう」

 爽太さんと二人になったわたしは、自分の気持ちを伝えるために、爽太さんの目の前に立った。

「爽太さん、頑張ってください」

「……ありがとう。頑張って来るからな」

 爽太さんはそう話すと、優しく頭を撫でてくれる。

「わたし、待ってますから。この子と二人で、待ってますから」

「ああ。……一年後、必ず迎えに行くから」

「約束、ですからね」

 わたしたちは、約束の印である指切りを交わした。

「愛してるよ、紅音」

「……わたしも」
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