【完結】わたしたち、離婚を前提の期間限定夫婦になります。


 両親が二人とも他界しているわたしにとって、家族がこんなに幸せそうに見えることは羨ましいし、なんとなくだけど理想の家族像な気がした。

「所で爽太」

 爽太さんのお父様が、少し険しい顔で爽太さんを見ていた。

「何だよ、父さん」

「お前たち、子供は作らないのか?」

「えっ」

 わたしはその問いかけに思わず、言葉が漏れてしまった。

「今の所、子供を作る予定はないよ。まだ新婚なんでね」

「そうか。……まぁこの先の夫婦生活は長いんだ。孫の顔も、焦ることはないか」

「そうですよ、お父さん。焦ることないですよ」

 お父様のその言葉に、爽太さんは黙り込んでしまった。
 そしてそのまま何も言わなかった。

 わたしたちは確かに新婚だ。だけど結婚しても、子供は作らないというルールがある。
 2年間の結婚生活の中で、すでに離婚を前提に期間限定夫婦となったわたしたち。
 そんなわたしたちが子供を作ることはあり得ないし、そんなのは出来る訳ないのだ。

「紅音さん、お兄ちゃんにいじめられたりしてない?」

「まさか! すごく優しくしてもらっていますので……」
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