【完結】わたしたち、離婚を前提の期間限定夫婦になります。


 やっぱり俳優さんだから、演じた役ってなかなか抜けないのかな……?

「そうそう!この前なんてさ、ドラマで医者の役やってたでしょ? あの時なんてもう本当に口悪くなってたの!」

 なんて沙和さんは言っていた。

「へぇ……。そうなんですね」

 やっぱり役に入り込むと、大変なんだな……。

「お兄ちゃん、元々口悪いけど、さらに悪くなってたよ」

 沙和さんはそう言って紅茶を飲み干した。

「昨日なんかセリフの練習するから付き合えって言われてセリフ言ったら、お前下手くそすぎ!なんて言われたの!ひどくない? ね、紅音さんもそう思うでしょ?」
 
「えっ!? わ、わたしですか……!?」

 い、いきなり振られても分からないよー!

「こら沙和。紅音を困らせることを言うな」

「はーい」
 
 爽太さんにそう言われて沙和さんは、口を尖らせて返事をした。

「それより沙和、お前そろそろバイオリンの稽古の時間だろ?」

「あ、いけないっ!そうだった……!」

 立ち上がった沙和さんは「紅音さん、またお話しようね!」と言ってリビングから出ていった。
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