【完結】わたしたち、離婚を前提の期間限定夫婦になります。
「好きです、爽太さんのことが」
そのことで爽太さんを困らせてしまうことは、よく分かっていた。
だけどこれ以上、自分の気持ちにウソをつくなんて出来なかった。
「……それ以上言うなって、言っただろ?」
「ごめんなさい……。だけど、どうしても伝えたくて……」
爽太さんのそんな困った表情、初めて見た気がした。
頭をポリポリと掻いて、ずっとわたしから目を逸らしている。
「……すみません。わたし、帰ります」
この場にいるのが辛くなり、そう言ってわたしは歩き出した。……やってしまった。変な感情は伝えてはいけないと思っていたのに、やってしまった。
どうしよう……。爽太さん、すごく困ってた。あんな爽太さん、初めて見る。
怒らせちゃったかな……?まぁ困らせたのは、確かなのだけど……。
そう思っていた時、「紅音……!」とわたしを呼ぶ声が聞こえてきた。
そしてその瞬間、わたしの背中にその温かい温もりを感じた。
「……え?」
爽太さんは、背中からギュッと抱きしめてきたのだ。そして……。
「俺も好きだ、紅音のこと」
と、言葉をくれた。