【完結】わたしたち、離婚を前提の期間限定夫婦になります。


「ああ。すぐにオペに入る。同意書、書いてくれるな?」

「もちろんだ……!」
 
 俺は加古川から受け取った同意書にすぐにサインをした。

「お前は、待合室で待ってろ」

「加古川……! 紅音のこと、よろしく頼む」

「任せろ。……必ず助ける」

 そう言って処置室へと戻っていった加古川。俺は紅音の手術が終わるまで、ずっと待合室で祈りながら待っていた。

「紅音……」

 必ず加古川が助けてくれる。だから、信じよう……。
 だけど焦りで足が震えてしまって、唇を噛みしめることしか出来なかった。

「……小田原さん、大丈夫ですか?」

 その時、俺に話しかけてきてくれたのは、加古川の嫁の美乃梨さんだった。

「加古川の嫁の……」

「美乃梨です。……奥様のこと、さっき夫から聞いて、わたしも心配で……」

 美乃梨さんは俺の隣に、大きくなったそのお腹を抱えながら座った。

「……加古川から、紅音が車に轢かれたって聞いた時、頭が真っ白になりました。一瞬、何を言っているのか分からなかった」

「……奥様、ボールを拾おうとした子供を咄嗟に助けようとしたみたいです」
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