【完結】わたしたち、離婚を前提の期間限定夫婦になります。


「……ああ、頼む」

 その時、手術を終えたばかりの紅音が手術室から出てきた。

「紅音……!?紅音……!」

 良かった……。紅音、本当に良かったな。
 手術を終えたばかりの紅音は、頭に包帯やネットなどが巻かれていた。顔や腕にもいくつかの傷もあり、痛々しい姿だった。

「ICUで様子を見てくれ。……それと、バイタルの変化にも注意してくれ。脳の腫れが引くまでは、定期的に様子を観察するように川富先生にも伝えてくれるか?」

「分かりました。……では」

 紅音はそのまま、看護師たちによってICUへと運ばれていった。

「……加古川、本当にありがとう。紅音を助けてくれて……本当にありがとう」

「何言ってるんだ。……俺は医者として、当たり前のことをしただけだ」

 俺は本当に嬉しくて、思わず加古川の手を握った。

「……俺、もし俺の前から紅音がいなくなったらって考えた時……。たまらなくイヤで仕方なかった。死にそうなくらい、不安になった」

「そう思うのは、当たり前のことだ。……大切な人を失う悲しみは、誰にも拭うことは出来ないんだ」

「……加古川」
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