【完結】わたしたち、離婚を前提の期間限定夫婦になります。
医者の友人から語られるその言葉は、とても重くて、とても胸に響いた。
「……医者が救える命を救うことを諦めたら、患者の命はそこで終わる。そんなこと、絶対にあってはいけないって。俺はいつもそう思ってる」
「加古川……」
さすが加古川だ。加古川のその医者としての精神力が、患者を救うことを奮い立たせてる気がした。
加古川の原動力と言っても、おかしくないだろうな……。
「お前の嫁、少しばかり入院することになると思うから、入院の手続きしておけよ?」
「あ、ああ。分かった」
「じゃあ俺次の仕事あるから、行くわ」
そう言って歩き出す加古川に、俺は「紅音を助けてくれて、ありがとう……!」と言った。
加古川は歩きながら左手を挙げて「またな」と言った。
「本当にありがとう……加古川」
これで俺は、紅音を失わずに済んだ。やはり持つべきものは、友人だな。
加古川が優秀な救命医で、本当に良かったわ。
その日から一週間は、紅音は手術後の様子を見るためにICUに入院することになった。
俺は紅音が麻酔から覚めるまで、ずっとそばにいた。
【爽太Side】