【完結】わたしたち、離婚を前提の期間限定夫婦になります。
車とぶつかった時、本当に死ぬかもしれないって思ったのは確かだった。
頭を打って意識が失くなった時、わたしはもう目が覚めないかもしれない。……本当にそう思った。
「俺、ちょっと飲み物買ってくる」
そう言って病室を出ていく爽太さんの背中を見ていたら、加古川先生がこんなことを言ってきた。
「……紅音さんは運ばれてきた時、頭を打った衝撃で脳の中で出血が起きていました。血圧も下がっていて、脈も弱かった。すぐにオペしないと、助けるのは難しかった。……だけど紅音さんを絶対に助けると、アイツに約束したから」
「……ありがとうございました。先生には、感謝しかありません」
わたしはそう言って、加古川先生に笑みを向けた。
「……アイツ、本当に心配してましたよ。紅音さんのこと」
「……え?」
「紅音さんがいなくなったらって考えたら、不安でたまらなかったって。……アイツ、そう言ってましたよ」
そう言っていたと聞いて、わたしはまた涙がこぼれた。
「アイツ、紅音さんのこと本当に大切にしてるんですね」
「……え?」
「じゃなきゃ、あんなに不安になったりしないですよ」