【完結】わたしたち、離婚を前提の期間限定夫婦になります。
⑨沙和さんの夢
「いらっしゃい、紅音さん」
「こんにちは、お母様」
「紅音さん!もう体、大丈夫なの?」
それから1ヶ月が過ぎようとしていた。今日は爽太さんの家族と月に一度の食事をする日だ。
わたしが事故に遭ってから、みんなわたしを心配してくれるようになった。爽太さんはあれから過保護になってしまい、わたしが仕事に行く度にちゃんと帰ってこれるのか、心配するようになっていた。
「大丈夫ですよ。傷口ももう、塞がりましたから」
あれからわたしは、定期的に錦総合医療センターへと出向いていた。
傷口の状態などを確認しているけど、以前よりも傷口はだいぶ塞がってきていて、ちょっとだけ安心した。
「良かった……。あの時は本当に、どうなるかと思って心配したのよ?」
「ご迷惑おかけしてしまい、申し訳ありません」
「謝らないで? こうして無事に生きてさえくれれば、わたしたちはそれだけでいいんだから」
お母様のその言葉にわたしは、嬉しくなってつい微笑みを浮かべてしまう。
「ありがとうございます、お母様」
「さ、紅音さんのために今日はとびっきり美味しいステーキを用意したの。食べましょ?」