【完結】わたしたち、離婚を前提の期間限定夫婦になります。
「……確かに」
それはそれですごいこととしか、思えない……。
「さ、食べましょう」
「いただきます」
わたしたちは、美味しいステーキを食べながら色んな話をした。
「……あの、沙和さん」
「ん?どうしたの?」
わたしはずっと、沙和さんに気になることを聞くことにした。
「沙和さんに聞きたいことが、あるんですけど……」
「何?」
「沙和さんって、お付き合いしてる人とかいないんですか?」
わたしがそう聞くと、沙和さんは「いないよ。まぁ好きな人は、いるんだけどね」とステーキを食べながら答えた。
「そうなんですね。どんな人ですか?好きな人」
「わたしの憧れの人よ」
「憧れの人?」
沙和さんの憧れの人って一体どんな人なのだろう……。ちょっと気になる。
「そう。バイオリン奏者の笹宮湊(ささみやかなで)。わたしの憧れの人、そして……好きな人」
え、笹宮湊!?あの有名なバイオリニストの、笹宮湊!?
「さ、笹宮湊って……。先週ウィーンで開催されたあの国際コンクールで日本人で初めて優勝した、あの笹宮湊!?」
「うん」