【完結】わたしたち、離婚を前提の期間限定夫婦になります。
ええっ……!あの笹宮湊のことを好きなの!?
「そ、そうなんだ……。笹宮湊さんのこと……」
「わたし、湊くんと同じ所でバイオリン習っててね。そこで仲良くなったの。だけど才能があって先生からも天才だって言われてた湊くんは、わたしなんかよりずっと才能に溢れていて、素敵だった。……わたしはそんな湊くんに憧れて、素敵なバイオリニストになりたいって思ってたんだけど……。湊くんはどんどん先に行っちゃって、なかなか追いつけなくなってきちゃった」
そうやって笹宮湊のことを話す沙和さんは、本当に苦しそうにも見えた。
「……沙和さん」
「ウィーンの国際コンクールで日本人で初めて優勝したってニュースを見た時、本当に嬉しかった。だけどなんか、ちょっとだけど、複雑だったな……」
沙和さんはきっと、憧れの存在だからこそ苦しいのかもしれないと思った。好きな人が活躍する姿は嬉しくないハズがない。
だけどそれは……。好きな人が優勝してというよりも、沙和さん自身が自分の才能に限界を感じていることに気づいたからかもしれないと、爽太さんは言っていた。