【完結】わたしたち、離婚を前提の期間限定夫婦になります。


「同じバイオリニストを目指して頑張ってきた仲間が報われることに対しては、とても嬉しいよ。これからの未来ある日本人だしね。……応援、しなくちゃね」

 なんて沙和さんは笑っていたけど、その表情はどこか切なくて……。

「……すみません、変なこと聞いて」

「いいのいいの。気にしないでね?」

「……はい」

 沙和さんはそうやって励ましてくれるように笑っていたけど、わたしには無理して笑っているようにも見えた。
 ……沙和さん、本当は辛いんだろうな。

「湊くんにメール出さなくちゃ。優勝おめでとうって」

 そう言って沙和さんは、リビングから出ていってしまった。

「……爽太さん、すみません。わたし、変なこと……」

 と口を開くと、爽太さんは「紅音のせいじゃない。気にするな」と言ってくれた。  

「でも……」

「沙和は湊のこと、ずっと憧れていた。いつか一緒に演奏してみたい。それだけを思っていた」

「……え?」

「沙和はまだ、夢を追い続けてる。……いつか湊と一緒に演奏出来るように」

 そう言われてわたしは、沙和さんのことを応援したいと思った。
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