【完結】わたしたち、離婚を前提の期間限定夫婦になります。


「湊は今、ウィーンで頑張ってる。その姿を見て刺激を受けたんだろう。……夢を叶えるために、沙和はもう一度立ち上がったんだよ」

 そう言われてわたしは、何かをふと思った。そしてこう言った。

「え……。だから、ウィーンに?」

「それもある」

 わたしたちが離婚するあと9ヶ月後、小田原家はウィーンに行ってしまう。……もしかしてその理由の一番は、沙和さんのため?
 沙和さんの夢を叶えてあげたいという気持ちがあったから、みんなでウィーンに……?

「……わたしも、応援したいです」

「え?」

「沙和さんの夢、応援したいです。……沙和さんの憧れの湊さんといつか、バイオリニストとして一緒に演奏が出来ることを。心から、応援します」

 わたしがそう言うと、お母様は笑顔で「ありがとう、紅音さん」と答えてくれた。

「沙和さんには、夢を叶えてほしいです。 わたしは、これと言って夢もないので……。夢のある人がその夢を諦めるのは、もったいないですから」

「……そうね。紅音さんの言う通りね」

「そうだな。……沙和のこと、応援してやらないとな」

「はい」
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