【完結】わたしたち、離婚を前提の期間限定夫婦になります。


 爽太さんと離婚したとしても、わたしはずっと沙和さんの夢を応援する。沙和さんの夢がいつか叶ったら、わたしはきっと嬉しくて泣いてしまうかもしれない。

 食事を終えて一旦、爽太さんは仕事を電話をすると言ってリビングから出ていった。

「紅音さん、あなたは本当にいい人ね」

「……え?」

 その時、お母様がそんなことをいってきた。

「あなたに出会ってから、爽太はよく笑うようになったと思うわ。……あなたに出会えたから、かしらね?」

 お母様にそう言われたわたしは、お母様の方に視線を向ける。

「……そんな。わたしは、何も……」

 何もしていない。むしろわたしのほうが爽太さんに助けられてばかりで、申し訳ないくらいなのに……。
 わたしは爽太さんにまだ、何も恩返しが出来ていない。

「いいえ、あなたのおかげよ。あなたがいてくれるから、爽太は変われたのよ。……本当に、ありがとう紅音さん」

「……いえ。わたしのほうこそ、皆さんに助けられてばかりで……。申し訳ないです」

 わたしがそう言うとお母様は、「そんなことないわよ」と優しく言ってくれた。
< 80 / 208 >

この作品をシェア

pagetop