【完結】わたしたち、離婚を前提の期間限定夫婦になります。


「お母様、わたし……。爽太さんとの子供がほしいです」

 今ならハッキリと言える。わたしは爽太さんとの子供を望んでいることを。
 この夫婦生活は後1年もないけれど、それでもわたしは、爽太さんとの子供がほしい。
 どっちみちわたしたちは、離婚することが決まっているのだ。だったらいっそのこと、ちゃんと爽太さんと夫婦だったという証くらい残しておきたい。

「……紅音さん」

「そんなことを望んではいけないこと、分かっていたつもりです。……だけどわたしも、親になりたいんです。 家族の愛をまともに知らないわたしが、親になりたいなんて、おこがましいことは分かっています。……だけど、何か一つでも残しておきたいんです。爽太さんとちゃんと夫婦だったっていう証みたいなものが」

 わたしの話を、お母様は黙って聞いてくれた。そして肩を叩いた。

「そう思うのは、自然なことよ。……女なら誰だって、みんな一度はそう思うものだから」

「お母様……」

 こんな風に言ってもらえるなんて、思ってもなかった。

「子供がほしいという気持ちは、わたしが一番、分かっているつもりよ」
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