【完結】わたしたち、離婚を前提の期間限定夫婦になります。


 遠慮がちに手を横に振る紅音に、俺はそう言って財布を渡した。

「……すみません、爽太さん。ありがとうございます」

「夫婦なんだから、気にするな」

「はい……」
 
 そうだ、俺たちは夫婦だ。寄り添い助け合いながら生きていくんだ。
 何があっても、決して一人じゃない。

「値段は気にせず、紅音が気に入ったものを買えよ?」

「は、はい。分かりました……」

「運ぶのが大変なら、配達サービスを使うといい」

「分かりました」

 こうして紅音と束の間の夫婦の時間を過ごした俺は、仕事へと出かけた時間になった。

「行ってくるよ、紅音」

「行ってらっしゃい。爽太さん」

 こうして笑顔で見送ってくれる紅音。そんな紅音の唇に、優しくキスを落とす。

「行ってくる。帰る時、連絡するから」

「はい。行ってらっしゃい」

 仕事に向かう途中、俺は車を運転しながら左手の薬指にはめている結婚指輪を眺める。
 この指輪は、愛の証。俺たちが夫婦だということを物語っている。
 だけど夫婦だからこそ、複雑な気持ちになる。俺は紅音と、家族になりたいのか……。


【爽太Side】
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