【完結】わたしたち、離婚を前提の期間限定夫婦になります。


「はい。ありがとうございます」

 配達サービスも同時にお願いして、会計を済ませたわたしは、爽太さんに電話をした。

「もしもし、紅音です」

「どうした?」
 
 電話越しの爽太さんの声はとても落ち着いていて、少しだけキュンとした。

「あの、掃除機、買いました」

「そうか」

「ちょっとあの、値段が高かったんですけど……」

 と言うと、爽太さんは落ち着いた声で「家電製品が高いのは、仕方ないさ。気にするなって言っただろ?」と言ってくれた。

「……ありがとうございます。運べなかったので、配達サービス、お願いしました」

「分かった。わざわざ連絡くれてありがとう」

「いえ!お仕事中、すみませんでした」

 わたしがそう言うと、爽太さんは「ちょうど休憩中だから、大丈夫だ」と言ってくれた。

「じゃあお仕事、頑張ってください」

「ああ」
 
 わたしは電話を切ると、そのまま家電製品売場から出て駅までの道のりを歩いた。

「でも、良かった」

 いい掃除機が買えたのも、爽太さんのおかげだ。本当にいい夫を持ったな、わたしは。
 爽太さんに感謝、しなくちゃ。
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