【完結】わたしたち、離婚を前提の期間限定夫婦になります。
普段はクールでカッコいい加古川先生も、赤ちゃんの前にしてすごく嬉しそうだった。
「デレデレしてるな、お前」
「そりゃあもう可愛いからな。子供はいいぞ?癒やしの存在だ」
癒やしの存在……。
「……いいな、子供」
思わずそう、呟いてしまった。
「え?」
「……あ、いえ。何でもないです」
「凜人さん、凜音のこと少しだけ見てて?」
「ああ」
その時、美乃梨さんがわたしに「ちょっと来て、紅音さん!」と手を引っ張った。
「え、ちょっと、美乃梨さん……?」
美乃梨さんは中庭に出ると、わたしに向かってこう言った。
「紅音さんも、赤ちゃんほしい?」
「……本当は、欲しいです」
「え?」
美乃梨さんは、わたしを不思議そうに見ていた。
「欲しいです、爽太さんの赤ちゃん。……わたし爽太さんと、家族になりたいです」
「……そっか」
美乃梨さんは複雑そうな顔をしていた。
「夫婦だからこそ、ちゃんと家族になりたいって思ってるんですけど……。わたしたちには、それはムリなのかもしれません」
わたしたちは、離婚することが決まっている。