鬼は妻を狂おしく愛す
次の日の朝、美来が目を覚ますと隣に雅空がいない。

もしかしたら、急な仕事で出ていったのかも?と思い、サイドテーブルを確認する。
いつもなら、必ずメモ紙を置いて出ていく雅空。
美来に黙って出ていくようなことは絶対しない。

でも今回は美来のスマホしかない。
ということは、屋敷の中にいるということ。

寝室を出て、リビングに向かうと雅空と犬飼が厳しい表情で話をしていた。
口の動きを必死に観察するが、早口の為か何を話してるかわからない。
いくら口の動きで話してることがわかると言っても、早口だったり、ボソボソと話してるような時は美来には読み取れない。

二人の雰囲気から、いい話ではないことはわかる。

また仕事かな?デートキャンセルかな?
と不安にかられていると、犬飼が美来の存在に気づく。
すぐにそれを雅空に伝えると、雅空が美来を見て微笑んで向かってきた。
「おはよう。ごめんね、傍にいなくて」
【おはよう。何のお話してたの?
仕事?デート、キャンセル?】
少し悲しそうに伝える、美来。

「ううん。ただね、夜は仕事が入ったんだ。
だから、ちょっと早目に帰ることになる。
ごめんね……」
その言葉に、美来は嬉しそうに頬を緩ませた。

【良かった。少しだけでも雅空とデートできるなら幸せ。でもいいの?それだったら、家でゆっくりしたいんじゃないの?】
「美来が楽しみにしてたんだから、なにがなんでも連れてくよ?美来の為なら、何でもしたい」

そうなのだ。
雅空はいつも美来を一番に考えているのだ。

以前のデートキャンセルも後からわかったことだが、丁度その時、敵対勢力に雅空が狙われていたので、安全の為に美来を外に出したくなかっただけなのだ。
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