鬼は妻を狂おしく愛す

｢え……｣
犬飼のただならぬ黒い雰囲気に、腰が退ける亜希。

｢教えろ……！？｣
そこには、謙吾がいた。

｢亜希さん達は？｣
亜希達は顔を見合わせて、大きく頷いた。

｢その代わり、一つ約束してください｣
｢え？｣
｢これからする話を聞いても、美来さんの友人で居続けると｣
｢わかりました｣

｢鬼頭組というヤクザをご存知ですか？｣

｢え……｣
謙吾や亜希達は、あまりの衝撃に動きが止まった。


｢美来さんは、鬼頭組・若頭の奥様です｣

━━━━━━━━！！！！

亜希は持っていたバックを下に落とす。
他の友人も身体に力が入ってない。

｢美来が、ヤクザの女……
しかも、一番ヤバい連中じゃん……
なんで！？｣
謙吾が犬飼の胸ぐらに掴みかかった。
｢………｣
犬飼は特に何の反応も示さず、謙吾を見据えている。

｢まさか、美来を脅したんじゃねぇだろうな……｣
｢は？まさか！
美来さんの意思で、若に嫁いでこられましたよ｣
｢嘘だろ……！？｣
そこで犬飼の胸ぐらから、手を下ろした。

｢犬飼さん｣
｢はい｣
｢少しだけ…美来と話をさせて下さい｣
亜希が静かに言った。
｢はい、亜希さん達ならいいですよ｣
犬飼が車のドアを開け、美来を呼び出す。
車から降りた美来に、亜希が手話で伝えた。

【美来、今、幸せ？】
亜希の表情がとても悲しそうで、美来もなんとなく事態を察する。
【うん、幸せ】
【そう。今度、絶対に会わせてね！旦那に！
私達にとって、大切な親友なんだから！】