鬼は妻を狂おしく愛す
雅空の鬼たる所以
雅空には、背中に大きな鬼の刺青がある。

自身と組の名前に因んだ刺青だ。
その刺青は、とても恐ろしい。
雅空そのモノを表しているかのような恐ろしさがあるからだ。


「━━━━わざわざ、ごめんね」
「なんすか?」
「単刀直入に言う。
美来には二度と会うな。
美来の存在をお前の頭の中から消去しろ」

後日、雅空は謙吾を事務所に呼び出していた。

「は?
それは、こっちのセリフだし!」
雅空の恐ろしい雰囲気にひれ伏すことなく見据え、言い返す謙吾。
「あ?俺が誰だかわかってて言ってんの」
「ヤバくて、イカれたヤクザだろ?」
「そうだよ。
ヤクザだよ?」
そう言って、隣にいた部下の奥田に目ふせする。

すると奥田が一枚の写真をテーブルに置いた。
「━━━━━!!!
じぃちゃん!?」
「お前、じぃちゃん子らしいなぁ」
「じぃちゃんに手を出すな!!!」

「じゃあ……もう一度だけ言う。
美来には二度と会うな。
美来の存在をお前の頭の中から消去しろ」

「最低だな…」
「最低だよ!美来は俺“だけ”の妻だ!
美来が俺の傍にいてくれるなら、何でもする」
「お前には、無理だ!美来を本当の意味で幸せにできない」

「そんなことわかってる」

「は?」
「“俺が”幸せで居続ける為に、美来が必要なんだから。
美来がいないともう……俺は生きていけない。
美来に触れてないと、苦しくて息切れする。
今だって……
会いたくて堪らない。
美来とは電話ができないから、その分欲求が抑えられない」
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