鬼は妻を狂おしく愛す
「……////」
無意識に美来の頬に触れていた。

目をパチパチさせて、見上げたままの美来。
「あ!す、すんません!!」
【どうしました?】
「いえ!何も……」
【顔が赤いですよ。体調悪いですか?】
そう伝え、額に触れようとする美来。

パチン━━━━━━!!!!
その手を思わず振り払った、犬飼。
犬飼的には軽く払った程度だが、思いの外力が入ってしまい、美来はバランスを崩してその場に尻もちをついた。
雅空もそうだが、犬飼も背が高い。
額を触ろうとして美来は少しだけ背伸びをしていたので、足を踏んばれなかったのだ。

「はっ…ヤバい━━━━!!?
美来さん!?すんません!!大丈夫ですか!?」
慌てて跪く犬飼。
【大丈夫です】
「お怪我は?」
見ると、手をついた時に擦りむいたようだった。
「すんません!!と、とりあえず手当てを」
すぐに車に促し、美来を乗せた。

車内でも、屋敷に帰って手当ての最中も、ずっと謝り続けている犬飼。
【謝らないで下さい。私が悪いんですから。
急に触られたら、嫌ですよね?
ごめんなさい】
「嫌なんかじゃない……むしろ…」
あのまま触れられたら、欲望が抑えられないと思ったからだ。
【ごめんなさい、もっとゆっくり話していただけますか?読み取れなくて…】
「俺は……」

「何やってんだよ………!?」

犬飼がビクッと震えた。
美来の少し後ろに、雅空が凄まじい怒りに包まれた状態で立っていた。
それもそのはず。
犬飼が美来の足元に跪き、しかも手を包み込むように握り、美来を愛おしそうに見つめている。

怒りに包まれるに決まっている。
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