鬼は妻を狂おしく愛す

【じゃあ…受け入れてくれるの？】
大きく頷く、美来。

その姿に雅空は、抑えていた欲求が爆破したように美来を抱き締めた。

｢好きだ……好きだよ、美来｣
美来には聞こえていないのはわかっていたが、言わずにいられなかった。


その日から二人はゆっくり気持ちを通わせていく。
雅空は、手話を猛勉強し習得して美来に話しかける。
最近は公園でのわずかな時間が二人の、デートのようになっていた。
【俺は、き、と、う、が…くです】
｢合ってる？｣
大きく頷き、指で◯を作る美来。
【美来を、愛してるよ】
目を見開いて、顔を赤くする美来。
【返事は？】

【私も、雅空が大好きよ】


雅空にとって、こんな穏やかに時間が過ぎていく感覚は初めてだ。
美来といると、自分がヤクザだということや、冷酷で最低な人間だということを忘れそうになるのだ。

そして美来の前だけは、なぜか穏やかに優しくなれるのだ。

雅空に“情”が宿っていく。
そして日に日に美来に心が奪われ、放せなくなっていた。

気づいた時にはもう……美来への狂おしい愛情から抜け出せなくなっていた。

【美来、俺と結婚して？】
【でも私じゃ、足枷にしかならないよ。
雅空は若頭さんだし。
私は雅空がいる世界を、全くわかってないよ。
怖いところくらいしか】
【美来に俺の世界は見せない。
本当に残酷で、恐ろしい世界だから。
でも安心して。美来は一生、俺が守る。
絶対に傷つけないって誓うよ】

雅空の力強い目に、美来は━━━━━━

【はい、よろしくお願いします】
と答えたのだった。

美来も雅空への愛情が抜け出せないところまで、はまっていたのだ。
雅空が最低な人間だとしても━━━━━


そして一年後、結婚したのだ。