あの夏、わたしはキミに恋をした。
上野くんが挨拶をした後ひとりひとりにお花と色紙が贈られた。
なんといっても人数が多いこの部活。
正直わたしがマネになってから1.2か月で引退だったので、喋ったことのない先輩もたくさんいる。
でもわたしには思い出がなくてもほかの部員たちにはみんな思い出があるようで。
ちゃんとひとりひとりとあいさつを交わす姿をみて野球部のマネになって本当によかったと思った。
「木下さんもありがとね」
最後の最後に冴島先輩がわたしのところにも挨拶にきてくれた。
「こちらこそ、短い間でしたが本当にありがとうございました」
「大輝にとってももちろんだけどさ、俺たちにとっても木下さんがマネになってくれてよかったよ。俺たちと一緒に夢を追いかけてくれてありがとな」
「先輩…こちらこそです」
ああ、やっぱりさみしい。
お別れはいくら経験してもさみしい。
「俺大学いってもあの家にいるからさ、いつでもご飯食べにおいで?愚痴もきくし」
そんなわたしの気持ちを汲み取っての先輩の言葉はとてもうれしかった。
わたしも野球部の一員としてみてくれているんだ。
「ありがとうございます!必ずいきます!」
「うん、待ってる」
「じゃあ元気でなー!!」
「先輩たちこそー!!」
最後はみんなで手を振りあった。