あの夏、わたしはキミに恋をした。
試合運びはハラハラドキドキだった。
1点いれられたと思ったら1点返し、1点入れたと思ったら1点返され…。
7回裏まで3対3の両者譲らずという感じ。
今はこちらの攻撃でチャンスだった。
「…がんばれ」
大輝の声が隣からきこえた。
ここで打席がまわってきたのは1年生の佐野くん。
大輝はきっとあの頃の自分と重ねているんだろう。
「いけー!がんばれー!うてー!」
そんな声援が響く中、ボールはきれいにキャッチャーのクラブへと吸い込まれた。
結局この回も点はとることができなかった。
「すいません…チャンスをものにできなくて」
「ナイスファイト」
悔しそうに戻ってきた佐野くんに大輝は優しく声をかけた。
大輝の言葉にほかの選手も「ナイスファイト」と声をかける。
そう、誰も悪くない。
それにここで打てなかった佐野くんはまたさらに飛躍できるだろう。