あの夏、わたしはキミに恋をした。
「残り2回、まずは抑えることだけに集中しよう」
「はい」
監督の言葉にまたみんなの顔つきが変わる。
「大丈夫、俺たちは勝てる」
選手がちらばっていく中、大輝はそうつぶやいた。
大輝は今日も試合にはでていない。
監督からの指示をただ待ち続けている。
昨日の大輝をみたら、今日も大輝はでたら活躍できるんじゃないかってわたしは思う。
でも大輝は昨日のようにピンチやチャンスがあっても「ださせてください!」とは口にしなかった。
ただお守りを大事そうに手に握りしめて祈っていた。
相手高校のスタンドの熱量がこちらまで伝わってくる。
「カキーン」
ずっと投げ続けてくれているピッチャーの笹原くんも限界のように感じる。
それでもみんなが守ってくれて、なんとか1点で抑えることができた。