あの夏、わたしはキミに恋をした。
「かっとばせー、上野!!」
「キャプテン!いけー!!」
スタンドからの熱量は最高潮だった。
ベンチのみんなも叫びすぎて声がかれてきている。
でもそれくらいみんな必死で応援していた。
必ず勝って決勝へ進む。
ただその願いをかなえるために。
次に聞こえてきた歓声は「わー!!!」という大きなものだった。
上野くんが打った球は風にあおられながら飛んでいき、下に落ちた。
「まわれまわれ」
その声に2塁にいた2年生が3塁を蹴って走ってくる。
「間に合え」
誰かがそういった。
わたしも祈るように手を合わせた。
「アウト!」
ただその願いが通じることはなかった。
審判の声が遠く感じた。
あと2点の壁は大きかった。
涙が頬を伝う。
わたしたちの夏は終わりを告げた。