あの夏、わたしはキミに恋をした。
「っ、なにこれ」
勝手すぎる。
こんな手紙だけ残していなくなるなんて。
「木下さんごめん」
「っ…どうして上野くんが謝るの?」
「…もうひとつ隠してたことがあるんだ」
「隠してたこと?」
私の言葉に上野くんはゆっくりと頷き、そして口をひらいた。
「本当は…本当は大輝はもう野球ができなかったんだ」
その言葉に鈍器で頭を殴られたような感覚がした。
「おばさんと監督だけが知ってて、俺も聞いたのは夏の予選の少し前だった。あいつ頑なに教えてくれなかったんだけど、それでも詰め寄ったら教えてくれたよ。でも木下さんには黙っててほしいって頼まれた」
「どうして…」
「桃菜はずっとそばで夢を応援してくれて、俺にもう一度野球ができるよって励ましてくれてずっとサポートしてくれて。そんな桃菜にいまさらできないなんていえなかったって」
「そんな…」
「本当は試合にもでないつもりだったんだと思う。でも監督に頼み込んでベンチ入りさせてもらった。正直あいつがでたいっていったときは驚いたけどな。でも多分木下さんにみせたかったんだと思う。リベンジとなるあの試合で打つ姿を」