あの夏、わたしはキミに恋をした。
そしたら大輝を苦しめていたのはわたしだ。
わたしが大輝に無理をさせてしまった。
それにわたしだって大輝がいつもと違うことに気づいていた。
大輝が無理をしていることに。
それなのにわたしは大輝に歩み寄ることはせず、目をそらし続けた。
最低なのは大輝なんかじゃない。わたしだ。
「それで治療に専念するために、近くの高校に転校するんだって。しばらく入院らしいけど」
「…」
「無茶したから、相当怒られたらしいよ。でもあのとき試合にださせた監督も、野球をやることをとめなかったおばさんも、大輝の夢を応援したかったんじゃないかな。もう歩けなくなったってかまわないって、それでも野球がしたいって。大輝はそういったらしいから」
さっきから涙がとまらない。
どれだけ大輝はひとりで頑張っていたんだろう。
「病院は…?新しい高校は?どこ?」
「…それがわからないんだ。それに家も引っ越してた。本当に黙っていっちゃったんだ」
「そんな」
「大輝はもう自分が苦しむ姿を木下さんにみせたくなかったんだと思う。大輝いつもいってたよ。木下さんには笑っててほしいって」