あの夏、わたしはキミに恋をした。

「こちらの席になります」

そういって椅子を引いてくれたが、わたしはしばらく座ることができなかった。


「…桃菜?」

「…なんで大輝が…」


案内された席の向かいに大輝が座っていた。

信じられなかった。

10年ぶりに会った大輝は髪が伸び、顔立ちも大人びていた。


「とりあえず、座ったら?」

「あ、すみません」


大輝の言葉にやっと気がつき、受付の人にぺこりと頭をさげて腰をおろした。


「…久しぶり」

「うん、久しぶり。でもどうして大輝がここに?」

「俺も知りたいよ。木村さんと会う予定だったんだけど」


その言葉に遥に騙された、とわかる。

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