あの夏、わたしはキミに恋をした。
「わたしはまだいいや」
誰かを好きになることがこの先わたしにはあるんだろうか。
わたしは誰かを愛することができるんだろうか。
「そういえば例の彼は?」
「例の彼って?」
「ほら、入学式のときに話しかけてきた!」
「ああ…とくになにもないよ」
そういうと遥は残念そうに「えー」と口にした。
例の彼。水上大輝。
たしかに彼とは廊下ですれ違うたびに挨拶はする。
クラスも違う彼とそんな関係になったのは、ほんの些細な出来事がきっかけだった。