あの夏、わたしはキミに恋をした。
「いいたいことだけいってたら、この先桃菜ちゃんのまわり誰もいなくなるよ。結局はみんな自分が一番大事なんだから」
そしてそれをいってきたのが楓ちゃんだったから、余計怖かったのだ。
「…どうして?どうして嘘ついたの?」
かろうじて絞りだした質問に楓ちゃんは鼻で笑ったあとにこう続けた。
「優樹菜ちゃんに頼まれたから。わたし優樹菜ちゃんとずっと仲良くなりたくて、そしたら桃菜のこと先輩に売ったら仲良くしてくれるっていってくれたの。だから」
おとなしそうな子というのは芝居だったのか。
あのときわたしにすごいねと拍手してくれたのも全部。
「もともと全部桃菜ちゃんが悪いんだからね。わたしは何も悪くない」
そういって楓ちゃんはくるりと背を向けて去っていった。