最低なのに恋をした
「お見合いって?」
専務は私から目を逸らさずに隣の椅子に座る。
「なんでもありません。会食の帰りですか?」
専務は今夜、社長と一緒に三田不動産の社長と会食だったはずだ。
「そう。ここに来たら安西さんに会えるかもと思ってね。で?お見合いって?」
顔は笑顔なのに、それとは似合わないくらいグイグイ割り込んでくる。
お見合いお見合いってしつこいな、と、面倒な事を聞かれたなとつい渋い顔になるのが自分でもわかった。
「ご注文は?」
兄が私と専務の話に割って入った。
「おススメをハイボールで」
専務は兄の方を見て笑顔で注文する。
今のうちにとバッグを持ちその場から離れようとした。
「待って」
私の右手首あたりを専務の左手にグイッと掴んだ。
「何でしょう?」
私は渋々専務を見る。
私は立っており、専務は椅子に座っているので見下ろす形になった。
薄暗いバーの照明の中、その綺麗な顔と目が合うとソワソワした。
会社の蛍光灯の下で目が合うのとはまた違うし、こんなに近くで専務の顔を見下ろすことなんてない。
専務が口を開こうとした時、専務の前にコースターが置かれその上にお酒の入ったグラスが置かれた。
「妹とお知り合いですか?」
兄から出たのはお酒の名前ではなく、兄としての言葉だった。
兄を見ると厳しい顔で専務を見ていた。
私が振られた時にここで会った男性だと気づいていないのだろうか?
その後も専務はこのお店に来ていると言っていた。
「ご挨拶が遅れてすみません。私は安西さんの上司で桜木と申します。たまにこのお店を利用させてもらっています」
専務はビジネス用の笑顔と声で兄に挨拶をする。
「お客様で来ていただいているのは知っています。妹の上司の方とは知りませんでした」
兄は軽く頭を下げる。
「そろそろ妹の手首を離していただけませんか?」
兄は専務の目を真っ直ぐ見てそう言った。
その言葉で、私はまだ掴まれていたことに気がついた。
「これは申し訳ありません。つい」
専務がパッと私の手首を離した。
最初こそグイッと引っ張られたものの、その後はふんわり掴まれていただけだったから気にならなかった。
「お兄さん、安西さんにお見合いの話がきているんですか?」
専務は私ではなく兄に聞き始めた。
「それは家の話で上司とはいえあなたには関係のない話なので」
兄はそう専務に告げ、別のお客さんの接客を始めた。
兄は接客をしながらも私と専務が気になるらしくチラッと私と目が合った。
何か言いたそうな顔をしているが、今は営業中だ。
兄の前にこの店のオーナーである。
「お兄さん、安西さんの事になると怖いね」
専務は私にヒソヒソ小声で話しかける。
「…軽そうな男性と話している所を見れば心配になるんじゃないですかね?」
私は専務の顔を見ずに兄を見ながらヒソヒソ小声で返す。
「安西さん、面倒くさそうな顔してるね」
クスクス専務の笑い声が耳に入ってくる。
「もう帰ろうと思っていたので。業務外ですし専務の話は明日でいいのではかなと」
お見合いの話は受けるつもりがないので、アレコレ聞かれたくない。というか詳細は知らないのだ。
専務は私から目を逸らさずに隣の椅子に座る。
「なんでもありません。会食の帰りですか?」
専務は今夜、社長と一緒に三田不動産の社長と会食だったはずだ。
「そう。ここに来たら安西さんに会えるかもと思ってね。で?お見合いって?」
顔は笑顔なのに、それとは似合わないくらいグイグイ割り込んでくる。
お見合いお見合いってしつこいな、と、面倒な事を聞かれたなとつい渋い顔になるのが自分でもわかった。
「ご注文は?」
兄が私と専務の話に割って入った。
「おススメをハイボールで」
専務は兄の方を見て笑顔で注文する。
今のうちにとバッグを持ちその場から離れようとした。
「待って」
私の右手首あたりを専務の左手にグイッと掴んだ。
「何でしょう?」
私は渋々専務を見る。
私は立っており、専務は椅子に座っているので見下ろす形になった。
薄暗いバーの照明の中、その綺麗な顔と目が合うとソワソワした。
会社の蛍光灯の下で目が合うのとはまた違うし、こんなに近くで専務の顔を見下ろすことなんてない。
専務が口を開こうとした時、専務の前にコースターが置かれその上にお酒の入ったグラスが置かれた。
「妹とお知り合いですか?」
兄から出たのはお酒の名前ではなく、兄としての言葉だった。
兄を見ると厳しい顔で専務を見ていた。
私が振られた時にここで会った男性だと気づいていないのだろうか?
その後も専務はこのお店に来ていると言っていた。
「ご挨拶が遅れてすみません。私は安西さんの上司で桜木と申します。たまにこのお店を利用させてもらっています」
専務はビジネス用の笑顔と声で兄に挨拶をする。
「お客様で来ていただいているのは知っています。妹の上司の方とは知りませんでした」
兄は軽く頭を下げる。
「そろそろ妹の手首を離していただけませんか?」
兄は専務の目を真っ直ぐ見てそう言った。
その言葉で、私はまだ掴まれていたことに気がついた。
「これは申し訳ありません。つい」
専務がパッと私の手首を離した。
最初こそグイッと引っ張られたものの、その後はふんわり掴まれていただけだったから気にならなかった。
「お兄さん、安西さんにお見合いの話がきているんですか?」
専務は私ではなく兄に聞き始めた。
「それは家の話で上司とはいえあなたには関係のない話なので」
兄はそう専務に告げ、別のお客さんの接客を始めた。
兄は接客をしながらも私と専務が気になるらしくチラッと私と目が合った。
何か言いたそうな顔をしているが、今は営業中だ。
兄の前にこの店のオーナーである。
「お兄さん、安西さんの事になると怖いね」
専務は私にヒソヒソ小声で話しかける。
「…軽そうな男性と話している所を見れば心配になるんじゃないですかね?」
私は専務の顔を見ずに兄を見ながらヒソヒソ小声で返す。
「安西さん、面倒くさそうな顔してるね」
クスクス専務の笑い声が耳に入ってくる。
「もう帰ろうと思っていたので。業務外ですし専務の話は明日でいいのではかなと」
お見合いの話は受けるつもりがないので、アレコレ聞かれたくない。というか詳細は知らないのだ。