最低なのに恋をした
3回掛け直したけど、3回とも留守番電話に切り替わった。
念のため留守番電話に「至急連絡」のメッセージを吹き込んだ。
同行者も連絡を入れるがやはり同じで留守番電話に切り替わってしまう。
もしかしたら今商談中なのかもしれない。
それはそれで帰社が遅れるという事だ。
室長の声が聞こえてくる。
話の内容を整理すると、騒いでいる男をまだ確保できていないらしい。
刃物という物騒な言葉も聞こえてくる。
なんとか連絡を取る方法はないか…
「あ」
私は急いでシステム手帳を開く。
クリアポケットに1枚の名刺が挟まれている。
初日に専務からもらった名刺だ。
その裏に書かれているプライベートの携帯番号を見る。
落ち着いて考えれば、社用の携帯が繋がらないのにプライベートが繋がるかというと、過労で発熱するくらいの専務だ。繋がらない可能性が高い。
でも、今は藁をも掴む気持ちなのだ。
慎重に名刺の裏の番号のボタンを押す。
5、6、7…呼び出し音は鳴るもののやはりでない。まぁ、仕方がない。
受話器を置こうと耳を離そうとした時ー
「はい」と専務の声が聞こえた。ブワッと体が熱くなる。よかった、繋がった。
「あの、今会社に戻らないでください」
要件だけを端的に話しすぎた。
「…安西さん?」
怪訝そうな専務の声が聞こえる。
「あ、今受付に騒いでいる男がいまして。専務を出せと」
「俺を?」
「あの、なので。再度連絡をしますので。
この後は社内会議です。確認次第、すぐ連絡いたします」
口早に要件を伝える。
「…わかった。よろしく」
専務の納得ないかない声が聞こえ、電話が切れた。
「室長、専務と連絡が取れました」
室長は先程の電話は終わっており、専務以外社長をはじめとする役員対応の指示を出していた。
室長が私を見る。
「社内会議は専務以外で始めます。予定通り第一会議室で」
「承知いたしました」
「それと警察が到着して犯人と話をしているとのことです」
「確保はまだされていないんですね」
「そうです…安西さんちょっといいですか」
室長は私に目で廊下へ出るように促してるのがわかった。
「はい」
室長はそれ以上の事は何も言わずに、廊下へ出る。私も後を追う。
室長は応接室に入っていく。
他に聞かれてはまずい話という事だろう。
私も応接室に入りドアを閉めた。
室長の向かい側に座り、室長を見る。
「犯人は専務に『女を取られた』と言っているそうです」
室長は溜息混じりに口を開いた。
私は一瞬目を見開いたものの、想像ができてしまったので、目を伏せる。
「そうですか…」
「安西さんは知っているんですね。専務の女性関係」
念のため留守番電話に「至急連絡」のメッセージを吹き込んだ。
同行者も連絡を入れるがやはり同じで留守番電話に切り替わってしまう。
もしかしたら今商談中なのかもしれない。
それはそれで帰社が遅れるという事だ。
室長の声が聞こえてくる。
話の内容を整理すると、騒いでいる男をまだ確保できていないらしい。
刃物という物騒な言葉も聞こえてくる。
なんとか連絡を取る方法はないか…
「あ」
私は急いでシステム手帳を開く。
クリアポケットに1枚の名刺が挟まれている。
初日に専務からもらった名刺だ。
その裏に書かれているプライベートの携帯番号を見る。
落ち着いて考えれば、社用の携帯が繋がらないのにプライベートが繋がるかというと、過労で発熱するくらいの専務だ。繋がらない可能性が高い。
でも、今は藁をも掴む気持ちなのだ。
慎重に名刺の裏の番号のボタンを押す。
5、6、7…呼び出し音は鳴るもののやはりでない。まぁ、仕方がない。
受話器を置こうと耳を離そうとした時ー
「はい」と専務の声が聞こえた。ブワッと体が熱くなる。よかった、繋がった。
「あの、今会社に戻らないでください」
要件だけを端的に話しすぎた。
「…安西さん?」
怪訝そうな専務の声が聞こえる。
「あ、今受付に騒いでいる男がいまして。専務を出せと」
「俺を?」
「あの、なので。再度連絡をしますので。
この後は社内会議です。確認次第、すぐ連絡いたします」
口早に要件を伝える。
「…わかった。よろしく」
専務の納得ないかない声が聞こえ、電話が切れた。
「室長、専務と連絡が取れました」
室長は先程の電話は終わっており、専務以外社長をはじめとする役員対応の指示を出していた。
室長が私を見る。
「社内会議は専務以外で始めます。予定通り第一会議室で」
「承知いたしました」
「それと警察が到着して犯人と話をしているとのことです」
「確保はまだされていないんですね」
「そうです…安西さんちょっといいですか」
室長は私に目で廊下へ出るように促してるのがわかった。
「はい」
室長はそれ以上の事は何も言わずに、廊下へ出る。私も後を追う。
室長は応接室に入っていく。
他に聞かれてはまずい話という事だろう。
私も応接室に入りドアを閉めた。
室長の向かい側に座り、室長を見る。
「犯人は専務に『女を取られた』と言っているそうです」
室長は溜息混じりに口を開いた。
私は一瞬目を見開いたものの、想像ができてしまったので、目を伏せる。
「そうですか…」
「安西さんは知っているんですね。専務の女性関係」