最低なのに恋をした
「私の目的は朝食を食べてもらう事で、監視がしたいわけではありません」
本題は朝食なのだ。
論点をすりかえないでほしい。
「マンションでつくってくれないと食べない」
またふりだしに戻った。
なんとか食べさせたい私と、マンションに行くのは厄介だと思う私が、私の中で闘っている。
「倒れますよ?」
「それじゃあ安西さんがマンションでつくって」
時計をチラリと見る。
このやり取りを始めてから20分が過ぎていた。
この後の予定も詰まっている。
私は苦渋の決断をする。
「わかりました。つくりに行きます…」
専務の表情が明るくなる。
私は何かに負けた気分。
「それじゃあ明日からお願い」
「承知しました」
専務の声は心なしか嬉しそうだ。
本当は朝食が食べたかったということだろうか。それとも吉田さんに教えてもらった『佐田家の味』が楽しみなのか。
まあ、専務の健康が優先だと専務のマンションに作りにいく決心をしたのだ。
その日の夕方、マンションのカードキーを渡される。コンシェルジュに話しておいてくれるとのことだった。そして材料費としてお金を渡してこようとしたため一旦断った。
「かかった費用はレシートを渡します」
そこは譲れない。
一秘書が過分に金銭をもらうわけにはいかない。
専務はクスッと笑い納得してくれた。
おむすびは私の自宅でつくって持参する。
専務のマンションのキッチンでつくるのはお味噌汁だけ。
通い始めてから1週間。
専務のマンションは会社から徒歩10分の距離にあるため、私は通勤途中に寄ることができる。
お味噌汁は自宅で佐田家の味を練習しつくっている。
吉田さんの味を私は知らないから、正解がわからない。
ただ、専務が「美味しい」と喜んで食べてくれているので良しとしている。
今日のお味噌汁の具は大根とワカメにネギというシンプルなもの。
おむすびはシャケにした。
専務は高級なコーヒーメーカーを持っている。本人はほとんど使ったことがないというから勿体無い。
ということで、私が来てから使っている。
コーヒーのいい香りがしてきた時、リビングのドアが開きシャワーを浴びたばかりのの専務が入ってきた。
「おはようございます」
「安西さん、おはよう」
白いTシャツにスゥエットという格好にも関わらず、がっこいいから困る。
「今日もありがとう」
ニコッとこちらに向ける笑顔は、確実に落としにかかってると錯覚するほどの色気だ。
冷静に、淡々と、私は秘書…
そう繰り返し、専務に抱くこの感情が顔に出ないように細心の注意を払う。
「いえ。丁度コーヒーが出来上がりました。ご用意しますね」
専務のグレーのマグカップに出来立てのコーヒーを注いでいると、その横に紙袋が置かれた。
「はい」
専務が私な横でこちらを楽しそうに見ている。
「開けてもいいですか?」
何が入っているかわからないが、はい、と渡されたことから今開けてということだろう。
「うん。開けてみて」
紙袋を開けてみるとピンクのマグカップが入っていた。
「専務、次からこちらのマグカップをお使いまになりますか?」
専務に尋ねる。
「これは、安西さんのマグカップ」
ニコニコニコニコ、何故か無邪気な笑顔を向けてくる。専務、30歳ですよ?その笑顔はなんですか…
ドキドキ、ドキドキ鼓動が鳴り始める。
本題は朝食なのだ。
論点をすりかえないでほしい。
「マンションでつくってくれないと食べない」
またふりだしに戻った。
なんとか食べさせたい私と、マンションに行くのは厄介だと思う私が、私の中で闘っている。
「倒れますよ?」
「それじゃあ安西さんがマンションでつくって」
時計をチラリと見る。
このやり取りを始めてから20分が過ぎていた。
この後の予定も詰まっている。
私は苦渋の決断をする。
「わかりました。つくりに行きます…」
専務の表情が明るくなる。
私は何かに負けた気分。
「それじゃあ明日からお願い」
「承知しました」
専務の声は心なしか嬉しそうだ。
本当は朝食が食べたかったということだろうか。それとも吉田さんに教えてもらった『佐田家の味』が楽しみなのか。
まあ、専務の健康が優先だと専務のマンションに作りにいく決心をしたのだ。
その日の夕方、マンションのカードキーを渡される。コンシェルジュに話しておいてくれるとのことだった。そして材料費としてお金を渡してこようとしたため一旦断った。
「かかった費用はレシートを渡します」
そこは譲れない。
一秘書が過分に金銭をもらうわけにはいかない。
専務はクスッと笑い納得してくれた。
おむすびは私の自宅でつくって持参する。
専務のマンションのキッチンでつくるのはお味噌汁だけ。
通い始めてから1週間。
専務のマンションは会社から徒歩10分の距離にあるため、私は通勤途中に寄ることができる。
お味噌汁は自宅で佐田家の味を練習しつくっている。
吉田さんの味を私は知らないから、正解がわからない。
ただ、専務が「美味しい」と喜んで食べてくれているので良しとしている。
今日のお味噌汁の具は大根とワカメにネギというシンプルなもの。
おむすびはシャケにした。
専務は高級なコーヒーメーカーを持っている。本人はほとんど使ったことがないというから勿体無い。
ということで、私が来てから使っている。
コーヒーのいい香りがしてきた時、リビングのドアが開きシャワーを浴びたばかりのの専務が入ってきた。
「おはようございます」
「安西さん、おはよう」
白いTシャツにスゥエットという格好にも関わらず、がっこいいから困る。
「今日もありがとう」
ニコッとこちらに向ける笑顔は、確実に落としにかかってると錯覚するほどの色気だ。
冷静に、淡々と、私は秘書…
そう繰り返し、専務に抱くこの感情が顔に出ないように細心の注意を払う。
「いえ。丁度コーヒーが出来上がりました。ご用意しますね」
専務のグレーのマグカップに出来立てのコーヒーを注いでいると、その横に紙袋が置かれた。
「はい」
専務が私な横でこちらを楽しそうに見ている。
「開けてもいいですか?」
何が入っているかわからないが、はい、と渡されたことから今開けてということだろう。
「うん。開けてみて」
紙袋を開けてみるとピンクのマグカップが入っていた。
「専務、次からこちらのマグカップをお使いまになりますか?」
専務に尋ねる。
「これは、安西さんのマグカップ」
ニコニコニコニコ、何故か無邪気な笑顔を向けてくる。専務、30歳ですよ?その笑顔はなんですか…
ドキドキ、ドキドキ鼓動が鳴り始める。